「山に登り始めました。 」#13 いい旅でした。

【前回のつづき】

水晶岳に行く為に登山を始めた僕は、裏銀座縦走ルートにていよいよ水晶岳に向かう。1日目は半日を移動に使い、午後は高瀬ダムからブナ立尾根で稜線まで上がり烏帽子小屋でテント泊。そして二日目の昼には水晶岳に登頂。気分は最高のまま午後からは三俣山荘で過ごす。この小屋には山の人たちがいっぱいいた。今回は、ここで出会った人達の話と3日目の記録。

 

三俣山荘での充実した時間

僕は初めて山小屋に泊まった。

 

宿泊の受付をする時に、予約すれば小屋が用意してくれる晩御飯が食べれるみたいだったが、リュックにお湯を入れるだけで出来上がるご飯とか、カップラーメンが入っていたのでそれを食べることにした。小屋のご飯は魅力的だったけど、明日も結構歩くから少しでも荷物を軽くしたかったのだ。そして受付を終えると、まずは布団がおいてある自分のスペースを確認してから荷物をまとめ、乾燥室にある強力なストーブの前に濡れたものを干した。

 

それからちょっと仮眠をとった後、僕の隣のスペースの人と少し話ながら過ごした。この人とはさっき鷲羽岳の手前あたりで会った。オレンジのカッパを着て「雨強くなって来ちゃいましたねー。」なんて話してくれたのを覚えていたし、雨の中あの長い道のりを歩いて来たという共通点だけで親近感が持てた。あまりプライベートな話はせず、今日の大変だった一日と素晴らしい体験を共有した。

 

その後、隣のスペースの人は小屋のご飯を予約しているとのことだったので、僕は自炊用のスペースに向かい、お湯を沸かすためにバーナーに火をつけた。周りには男性が2人、女性が3人いた。すでに仲良くなっていたようだったが、それに気付かずその5人のど真ん中に座る、、、。確かに僕はこーゆーとこある。ごめんなさい。でもすぐに会話に入れて貰って一緒にご飯を食べた。この後もロビーみたいなところでビールを飲みながら話をした。みんな面白い人達だったけど全部書くとキリがないので、この人たちがどんな人達なのかがわかる内容だけ書いておこうと思う。

 

まず2人の女性は友達同士で、この北アルプスの奥地まで飯盒(はんごう)を持って来て米を炊いた。それから厳重に温度管理された肉を七輪で焼き、焼肉を食べた、と。歩くだけでも大変なのに肉や米を背負って来るとは恐るべし食いしん坊。素敵すぎる。

そしてもう1人の女性は僕と同じ神奈川の人で、去年から山に登り初めた、と。こんな奥地までなぜ来たのか?と聞くと、写真を撮りたかったのでカメラの機材を持ってここまで来た、と。、、、歩くだけでも大変なのにだ。素敵過ぎる。

それから凄く道具に詳しい男性もいた。かなり大きなリュックを背負っていたので何が入っているんですか?と尋ねたら、酒だという。重いのに。歩くだけでも大変なのに。そこまでして酒を沢山持ってくる理由はシンプルだった。本人いわく、もし遭難して死ぬなんて時が来たときに酒がなくてどーする?と。なるほど、わからんでもないけど、わからん。でも素敵過ぎる。

そして最後にもう1人男性、1年に1回ある10日間の連休を全部北アルプスに使うために九州から車で来たようだ。少し詳しい話を聞いてみたら、九州からこっちまで運転して来て、まずはじめに登りたかった山に登り、下山して車で移動。また他の場所から山に入って現在この山小屋にいる。明日以降このまま北アルプスを横断して下山したら、電車やタクシーを使って車に戻り、そのまま九州へ運転して帰ると言う、、、素敵過ぎる。

当時の僕からしたらもうみんな狂っていた。この人たちと話していると、僕はそんなに山が好きじゃないのかもしれないとすら思った。北アルプスってこんな人ばかりなのか?少なくとも夏も終わる平日の今日、ここにはこんな感じの人しかいなかった。この日は初めてのテント泊から目標の水晶岳に登頂して、その夜に初めての小屋泊で話した人がみんな本当に刺激的だったという流れだったので、おそらく2度と味わえない独特の世界観の一日に僕の心は凄く満たされた。

 

明日は晴れる。そして明後日以降はまた天気が崩れる。明後日以降も晴れならもう少し先へ進みたかったけど、予報は変わらなかったので、明日下山することに決定した。そしてもちろん九州の人は嵐でも行くと目を輝かせながら言っていた。僕は笑った(笑)僕は明日の何時に出発するか具体的には決めていなかったので、もう会えないかもしれない皆さんに楽しく過ごせたお礼を言って布団に向かった。そして夜が更けた頃、寝静まる登山者の間をシャシャっと抜け、抜き足差し足忍び足で外に出たのでござる。ぼやっと灯る小屋の薄明かりがない暗闇まで行って上を見上げた。星が沢山見えて綺麗だった。目が慣れてきて気付いたが、やはり同じことを考えていた人はいたようで、何人かが空を見上げていた。それからまた静かな小屋の中に戻り、そーーーっと自分のスペースに戻り布団に入ると、すぐに睡魔が来たので大きなイビキをかきながら眠ました、ごめんなさい。

 

 

三俣山荘から新穂高へ

↑3日目は、日の出に合わせて出発した。小屋から外に出るとまず現れた景色はこれだった。昨日までの天気が嘘のようで、気分がスーッと軽くなる。

 

↑やはり僕は、青い空、白い雲、大きな太陽!みたいなベタなのが好きみたいだ。昔から海ばっか行ってたのも関係あるのかもしれない。ふと周りを見ると、昨日オレンジのカッパを着ていた隣のスペースに寝ていた男性がちょうど出発するところだったので、「最高ですねー。」って声を掛けたら、「この景色を見ると、昨日大変だった事も忘れちゃうんだよなー。」と言って笑っていた、、この人も明後日、雨の中を歩くそうだ(笑)

 

↑一方、僕はといえば、明日(4日目)の天気が崩れることはあらかじめチェックしていたので、すでに3日目に下山することになった場合のゴールは新穂高温泉に設定してあったので、このまま新穂高温泉に向かう。周りには昨日一緒に話していた人達も何人か見かけたので、「また何処かで!」と声を掛け、昨日の楽しい時間のお礼も兼ねて頭を下げた。

 

↑今日の朝日は格別だったので、何度も目に焼き付けてから新穂高に向けて出発した。

 

↑道に大量の石がある。雨が降ると水路になってしまうなどの問題があって、誰かが運んだとかあるんだろうか?

 

↑三俣山荘の水場で顔を洗ったら目が覚めた。

 

↑後ろに見えるのは昨日登った鷲羽岳。素敵。

 

↑晴れている北アルプスは最高。まあ昨日の雨も、終わってしまえば結局最高。

 

↑僕が写したスマホの写真は臨場感に欠けるけど、全てのものになんとも言えない迫力がある。

 

↑パノラマで撮影してもへんてこりんなものは一個も写らない。いつでもずーっと360度の大パノラマ。

 

↑振り返ると鷲羽岳と三俣山荘。左奥にはカッコ良すぎる水晶岳。

 

↑三俣蓮華岳(2841.4m)。ここの景色はよく覚えている。風は強かったが晴れてる北アルプスの景色は最高だった。

 

↑僕がいまいるのは山。そして向こうには山が見える。その見える山の向こうにも山が見える。ずーっと山しかないんじゃないか?って言うぐらいの景色には得体の知れない感動があった。

 

↑良い道だ。このあたりで大学生の女性とすれ違う。「1人?」と尋ねると「そうです!」と笑顔。僕には、若い頃にここに1人で来ようなんて発想は微塵もなかった。素晴らしい。そして「お気をつけて!」と、先を急ぐ。

 

↑双六岳(2860.4m)に到着。景色にしても達成感にしても、もういちいち最高なんて思わなくなった。最高なのが当たり前になっていた。これで良い。何をしていてもずーっと最高なのが当たり前。全ては自分次第だ。少なくとも北アルプスにいる間は、ずっと最高。

 

↑昨日山小屋で、槍ヶ岳に向かって歩く感じのすげー良い道があるって聞いていた。あの先にある平らなところか?

 

↑これだ。このまま登って行くと、前から槍ヶ岳が出てくる。動画撮った気がするなー。あとで探してみよう。

 

↑昨日との違いは晴れてるだけなのに、今日の時間はあっという間にすぎて行く。天気も関係あるかもしれないが、「水晶岳に登ったあとだから余裕が出た」のかもしれないし、もう「帰り道だからなごり惜しんでいる」のかもしれない。ただ、今までの僕の山歩きデータからいくと、「用が済んだからとっとと帰りたい」という可能性も拭いきれない。

 

↑さあ、ここを下ると小屋があるはずだ。僕はそこでカレーを食べたい。

 

↑奥に見えてきたのは登山道最難関コースと言われるルート。行ってみたいな。

 

↑見えてきた。あの小屋でカレーを食べてから右に進めば新穂高方面だ。明日(4日目)が晴れたらまだ真っ直ぐ進めたんだけどな。残念だけどまた晴れてるときに歩きに来よう。

 

↑看板に歓迎された。気分が最高だから看板にお礼言っちゃいそうなぐらいには嬉しい。またいつか会いに来るよ。

 

↑カレーとコーラをいただいたあと少しのんびりしてから先に進む。振り返ると双六小屋と、その後ろには鷲羽岳。なんか鷲羽岳ばっかり出てくるから、やたら愛着がわいてしまう。鷲羽岳にもまたいつか会いに来よう。

 

↑太陽があると本当に快適。そもそも寒いのが苦手で、暑いのは平気だから余計に太陽に良い印象があるんだろうな。

 

↑写真左の方から槍ヶ岳に続く稜線、西鎌尾根ってやつだ。この写真を撮った場所では、年配の方が座ってこの景色を眺めていた。その人の周辺にある空気を壊さないように、通り過ぎがてらさり気なく「こんにちは。」と声をかけると、穏やかに「こんにちは。」と返ってきた。

 

↑鏡平山荘にある池に着いた。

水面に槍ヶ岳が映れば "逆さ槍" が撮影できるという場所みたいだが、少し風があったので写らなかった。正直言うと、そんなに興味なかったのでスルーしようとしたのだが、ここにいた登山者の方々が色々と説明してくれるもんだから撮影する羽目になって、この写真を撮った。いや、撮らされたと言っても過言ではない。しかし、そんな出来事を含めて考えると、なんだか思い出が一個増えた写真になったので、結果的には僕にとって良い写真になったのかもしれない。ありがとう。

 

↑結構、下ってきた。川の水も凄く綺麗。暑いから泳いだら気持ちいいんだろうな。

 

↑今回の旅の相棒。こいつのお陰でめっちゃ良い旅になった。ありがとう。

 

↑最後には綺麗な色がみれた。

 

↑何度も言うが、太陽があると楽しい。

 

↑途中で少しの間、画家の青年と話しながら下った。名古屋から素材を撮影しに来たらしく、昨日は双六小屋でテント泊してきたようだ。素敵な生き方だなーと思った。

 

↑彼の山での体験や経験を色々と教えて貰った。夏にはポカリの粉を持ち歩いて水場などで天然水を汲んで作るらしい。うまそうじゃないか。いまではたまに真似をしているよ。ありがとう。

 

このあと僕は、新穂高温泉からバスと電車を乗り継いで神奈川に戻った。目標にしていた山に行ったあとというのは何とも言えない安堵感みたいなのがあった。さあ次は何をしよう。山じゃなくてもいいんだけど、山は楽しかったな。山には素敵な人たちが沢山いたし、また山で出来ることや楽しいことを探してみよう。そう思って僕の山遊びは一旦終わった。この時から3年経った2019年現在、まだちょこちょこ山に登っている。そして新しい山との関わり方も見つかってきたので、今後も山で楽しく遊んでいこうと思う。

 

今になって振り返ると、水晶岳を目指していること自体が毎日を楽しくさせていたような気もする。色んな人と出会ったし、新しい自分との向き合い方も勉強出来たし、色んな考え方も勉強出来た。音楽ばかりやっていた頃に運動不足で鈍った体も、動けるようになってきた。そしてこれは自分の人生の基盤にもなる。またこんな考え方を楽しめるようになったこと自体が、登山を始めてから水晶岳に登頂するまでの日々で得た収穫かもしれない。でも油断しちゃいけないのは、この収穫はただただ歳を重ねたから感じ取っている収穫なのかもしれないということ。まあ結局、どちらにしても目標は小さいものも大きいものも沢山ある方が楽しい毎日になるのは間違いない。

 

ここまで読んでくれた人は本当にありがとうございます。 僕は "夢や目標を沢山作って遊ぶ"って生き方が幸せなことだと改めて山から学びました。全ての軸は心にあるので、これからはもっと素敵な人達の心を繋げて自分も楽しんで生きていこうと思います。いつかみなさんと一緒に山に登れると嬉しいです。

 

山登り始めました。 

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